「田中 作品展」丙午立春
2026年 1月31日(土)~ 2月8日(日)12:00~18:00
当ギャラリーにて
このたび 田中満治さんの展覧会を1月31日(土)〜2月8日(日)に開催いたします。
素材と向き合い、木に誠実であることを貫いてきた田中満治さん。
7年半前の2018年6月、GALLERY IN Fields で初の個展を開いていただいてから三度目と
なる展覧会です。
表現は時間とともに深化し続けています。
これまでの積層と、今なお動き続ける現在地を、ぜひ会場でご覧ください。
どうぞご期待ください。


from 田中満治:
自身 6 年ぶりに作品展を開催します。
この間、注文家具の他、小作品や空間作りの仕事を手掛けてきて、あっという間に月日が経ちました。
久しぶりに使い手が決まっていない作品作りの時間をとり、これまで模索してきた木の表現について、再考しました。
音響を踏まえた空間づくりについては、独立前から長年お付き合いいただいていている、浜田 博幸さん。
テーブル脚部の制作には金工の光本 岳士さん。大学時代からの先輩でもあり、アトリエのあるスタジオの主宰者です。
昨年から協働している若手の木工作家の坂 琢磨さんの お三方にも加わって関わっていただきました。
出会った木をどのように作品にしていくかは、異素材とのバランスをや音の響きや香りも感じ、削る毎に現れる新たな木目を追いながらどう決めていくか。
五感を働かせて今できる自分のすべてです。
ぜひご来場の上、ご覧いただけますと幸いです。
Facebookより
田中満治
独立して気づけばあっという間にもうすぐ8年になります。
今思えば、娘はまだ大学生だったときで、周りからは無謀だと言われましたが、後先考えず、最初はベランダで木を削りながら、様々なご縁やお力添えのお陰様で木工を続けることができ、改めて感謝しております。
昨春からは東京造形大学で木工の講座を受け持つことになり、前後期で105人の美大生と木に向き合う時間を共有する機会にも巡り会いました。
大学が来春まで休みの今、クライアントの決まっていない自分自身の作品造りの時間を6年ぶりにとりました。生計は決して順風満帆ではありませんが、6年間温めてきた今やりたいこと、できることに精一杯向き合っています。
6年ぶりの作品展に向けて
ー①ー
今回の作品の木の響きについて、20年以上お世話になってきた音響家の浜田さんに相談すると、奥深い判断やこうすべきだという方向性が見えてくる
樹種による違い
部位によっても違う
育った環境により個体差も異なり
機微
肌触り
刻一刻
目だけでは追えない変化や違い
香り
風合い
そして自身の体調
あ、そうだったんだ
それらすべての感受性や自然の律動を作品に込め、なんとか形にしたい日々
【音響家の浜田さん】

ー②ー
木工家としてやっていくしか選択の余地はなく、独立後当初の制作場所は自宅ベランダだった。
あたかも沈没寸前の木の船で船出した8年前の初個展。
来場された大学時代の先輩、金工作家の光本岳士さん。それなら部屋に空きがあるから来ないかと誘ってくださり、奇跡的に自宅近くにアトリエを構えることができ、様々なジャンルの作家仲間と制作する環境を得た。
以来、木だけでなく、金属についてはいつも相談し、これまで数えきれないくらい制作を協働していただき、自分だけでは請け負いきれない空間レベルの仕事もこなせた。
今回は鉄でテーブルの脚をデザインし、制作と塗装を光本さんに担っていただいた。
木だけでは決して作れない形。
特に繊細な形状を造るには木は強度的に限界がある。
学生時代に、銅、真鍮、白銅、アルミなどを取り入れて作品を作った経験が、ようやく日の目を見たような気がする。
金属の冷感や硬さは真逆の木の特性を引き出すためにも、より望ましい形態や機能を考える上にも重要な課題となる。
ばらつきが多く繊維方向によっては強度的に弱点のある木と違い、どの方向でも強度を均衡に保てる金属の長所。
それぞれが調和しながら形にすれば、これまであまり目にすることのなかった作品にできると考えている。
そして、木や金属は人間にも地球にも欠かせない循環可能な素材。
木は植えて育てれば良いし、金属は精錬し直せば持続的に使える。
共に使えばプラネタリーヘルスに繋がる。
なぜ鉄にこだわったかは次回アップで。
【アトリエのあるスタジオ錬主宰の光本さん】

金工、陶芸、絵画など様々なクリエイター10人が共生している
ー③ー
木だけではなく金属。とりわけ鉄を使った。
もっとも影響を受けたのは畠山重篤さん。
牡蠣やホタテを育てるために、源流の森づくりを続けた成果として、東日本震災で壊滅的な被害を受けたのに、奇跡的に復興された。
牡蠣やホタテは1日に200リットルの海水を飲む時にプランクトンから栄養を得る。
植物プランクトンは様々な樹種からなる豊かな森の腐葉土の中でフルボ酸鉄と繋がり川を流れて汽水域を経て湾まできて、やっと牡蠣やホタテの栄養になる。
鉄分は人間はもちろん、あらゆる動物の血液に溶け込んで脳や体にビタミンやミネラルを運び栄養を与える役目を担っている。
そして地球の中核は1/3が鉄分だということを畠山さんから幾度も聞いていた。
簡単には説明しづらいので、何故鉄が必要かを詳しくを知りたい方は畠山さんの著書
「鉄は魔法つかい」
「人の心に木を植える」
をお読みください。
本のイラストは大学の後輩のスギヤマカナヨさん。そのご縁で著者の編集者の小鮒由起子さんも交え、様々な地をご一緒するようになった。
畠山さんには鉄はもちろん木のこともとても詳しく、森と海、川と汽水域の大切さを沢山聞かせていただいた。
書ききれないくらいの中身の濃い時間。
そして、四季折々に牡蠣や帆立、鱈に太刀魚に鰹など、そして山鳥が届き、味と恩恵を噛み締めていた。
昨年亡くなられて以来、今は届かなくなってなんともいえない失意。
ご教示いただいたことを受け止め、僕なりの感謝と追悼の念、そして次世代へ受け継ぎたいことを今回の作品に込めた。
可愛がってもらった祖父の名も鉄一だ。
不思議に繋がるご縁。
【東日本大震災で被災した源流の森を復興させた畠山重篤さん】

ー④ー
砕けそうな木や割れや節があり、そのままでは家具としては受け入れてもらえない場合がある。
だけど一見短所と捉えられがちな個性に、木ならではの魅力を感じ、惹かれてしまう。
打開策の一つは、ウレタン樹脂やレジン(エポキシ樹脂)で固めて木を呼吸させないようにして、視覚的な美しさをとどめる技法。
ただ、木本来の香りや肌触りを完全に打ち消してしまう。
木の良いところは、見た目以上に肌触りと香りだ。
縄文期から受け継がれている漆塗りもあるが、最近は外国産やまがいものが多く、これも木本来の香りや肌触りを失う。
木の建築や家具や小物と共に過ごすとき、人はどんな要素に惹かれ、心地良いと感じるのだろうか。
木が生まれ育ち、木材になり、誰かしかの手により置かれた空間の中で作品や製品に生まれ変わる。
いずれは腐りやがては土に還るという循環の中で、
建築、家具や生活の道具になり、どういう過程を経るのか。
厳しい環境の中でも変化していく木に、自分はただ心地良い愚直さや潔さを感じる。
世間体やしがらみにとらわれない、自然体やおおらかさを持ち続けたいと思う。
何が望ましいかはあくまでもそれぞれ人の都合に過ぎない。
今回の作品には、様々な価値観に対しての否定を避け、おのおのにそんな感覚や感情に寄り添えられたら良いのにという願いを込めた。


